いとうせいこうのやさしさは、悪霊犬を忠犬に変えてしまうくらい大きい




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ネットで「いとうせいこう」で検索すると、実に様々な顔、肩書きがでてきます。
DJ、ラッパー、小説家、子供番組の主人公、司会者、お笑いタレント、俳優、作詞家、最近ではベランダー。
いや、実際にはもっと他にもたくさんあるのでしょうけれど、今のわたしには「いとうせいこう=小説家」が一番しっくりきます。
それは「想像ラジオ」があまりにもよかったからかもしれません。

東日本大震災の後に書かれた「想像ラジオ」は、読んでいると本当にそんなラジオがあるのかもしれない。もしかしたら、わたしの耳にもDJの声が届いているんじゃないだろうか・・・と、錯覚するくらい。それと、震災後いろんな形のメッセージがありましたが、こんなにやさしい言葉や形はないんじゃないかなと思います。なんていうのか、そっと肩に手を置いてくれるような、そんなやさしさに感じたのです。

「想像ラジオ」を読んでしばらくたってから、いとうせいこうがTVで「悪霊犬に憑かれていた話」をしていました。
何でも突然体調が悪くなり、夜中になると夢遊病者のように冷蔵庫の中をあさったり、うなったり、とにかく行動がおかしい。
それで、何人かの“見える方々”が彼を見ると、口をそろえて「悪霊化した犬が憑いている」という。
信じる信じないは別として、こんな穏やかじゃない話を聞けば、誰だって気持のいいものではありませんよね。
犬好きなわたしだって、さすがに「悪霊犬」は怖いです。お祓いでもしてもらって、少しでも気分を楽にしたくなります。

いとうせいこうのやさしさは、悪霊犬を忠犬に変えてしまうくらい大きい

でも、いとうせいこうは違うんですねー。ここがスゴイところ。お祓いをしてもらおうと考えた時「お祓いをしたら俺は楽になるけど、祓ったこの悪霊犬はどこへ行く?
もしかしたら、年端もいかない女子高生に憑いてしまうかもしれない。そんなことになったら、そのコの人生どうなる?
だったら自分でこの悪霊犬を飼おうじゃないか」と。
それから、その気持が悪霊犬に通じたのか?体調も良くなり、悪霊だったわんこはすっかり忠犬となって、いとうせいこうを護ってくれるようになったんですって!

この話を聞いた時、わたしは思わず笑ってしまったんですけれど、でも後になってじーんときちゃいました。
だって、悪霊犬が他の誰かのところへいくのなら自分で飼おうだなんて。そんな発想、わたしには微塵もありませんもの。しみじみと、いとうせいこうという人はやさしい人なんだなぁって思いました。

いろんな才能をたくさんもっているいとうせいこうだから、どんなことでもお茶の子さいさいでやってのけちゃうイメージだけれど、こんな質のよい「やさしさ」を知っているのは、それだけの経験を十分重ねてきたからなんでしょうね。だから「想像ラジオ」のような押し付けのない、じんわりじんわり伝わるやさしい小説が書けるのだと思います。




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